面白いのよ、『トラベラー』


 不肖私、まだ25ですが、それよりも若いプレイヤーに骨太のRPGを広めよう計画、というのをやってます。
 で、今回は、あの『トラベラー』をやりました。ルールはあらかた『メガトラベラー』から拾ってきたのですが。


 なぜ『トラベラー』かというと、『トラベラー』みたいなプレイスタイルのRPGって、あまりない気がするからです。

 もともとRPGは架空の世界を構築するというのが基本の思想としてあるわけですが、その架空の世界の構築する際の法則というのは、基本的に「原作コミックの再現」だとか、「(主にキャラクターの強さに重きを置いた)ゲーム性」だとかを最重視する形になっており、あまりRPGというジャンルの形式そのもの(かっちりとした因果律が定まった世界のなかで、能動的にキャラクターを動かせるということ)に見合った世界観を提示しよう、という動きは少ないように思えます。


 ところが、『トラベラー』は、「真面目に宇宙SFをやる」というのが基本のコンセプトとしてあって、まあナノテクとバイオテクノロジーはあまりフォローされてないのですが、基本的にSF的な状況を再現するところにルールの比重が置かれており、それゆえに私としては、かえって斬新であるように思えるわけです。ルールシステムを通して、世界をきちんと表現することができ、それゆえに細部(とりわけ生活)を軽んじることなく自然にロールプレイができる。RPGならではのやりがいとして、これはとても大事だと考えます。


 しかし、ルール処理を全開でやると、敷居が高く思われてしまうので、とにかく慣れてもらうのが先決と、フレーバー重視でマスタリングを行なってみました。これ、下手すると非常につまらなくなってしまうのですが、まあ、自分的にはなんとか及第点。
 『トラベラーハンドブック』と『タクテクス』誌のバックナンバーと『帝国百科』の概要から、最初に世界観をがっちり説明しておいて、カンパニーを組ませて、好きに動かさせる。動かないようならば、レフリー側から事件を起こして巻き込みにかかる、という流れで行きました。


 『トラベラー』の目玉である交易は、かなり基本ルールを簡略化した形でやってしまいましたが、基本的に仕入先と搬入先のUWPをいちいちチェックして、ブローカーを探して……とやって場を停滞させるよりは、慣れない人に親しめるようにするためには、自作でもいいので、単純にしてしまってよいと思ったのですよね。

 で、交易が停滞したら、例によってこっちからイベントを起こし巻き込みにかかる、としたわけです(「搬入した品物が実は破損していた」とか、「荷物に麻薬が紛れ込んでいた」とか) 。


 シナリオに登場させる金の規模は、見切り発車で全然問題なかったですね。


 あと、テクノロジー関係で便利すぎる部分は軒並み却下、でいきました。特にコンピュータデータベースと恒星間ネットワークは、もう全然役に立たない類のものとしてしまいましたが、正解でした。
 また、セッションの雰囲気は意図的にコミカルなものにしました。本当はもっとシリアスな感じ(メガトラベラーの『ハードタイムズ』みたいな)の方が私は好きなのですが、まずはSF-RPGというジャンルに馴染んでもらうほうが先決なので、まあ私なりにポップに、という感じですか。
 それと、やはり、パトロンNPC)のキャラを立たせるのは、とても大事だと思いました。トラベラーは人間関係が大事なゲームなので、とにかくパトロンはシナリオのキモでしょう。


 あと、これもハードルを下げるためなんですが、マスタリングを気軽にやってもらうために、なるべく手軽にセッションを行なう方法を考えておき、それを実践してみました。

 考えた方法とは、つまり、『トラベラー・ハンドブック』に掲載されているリソースや方法論を活用する、ということでした。資料をしゃぶりつくす方法を、実演してみせようと思ったのですね。

 この、既に発表されているリソース(ハンドブックじゃなくても、サプリメントの地図とか)を補助輪として使うというのは案外重要です。考えるヒントが増えるし、PLからの咄嗟の質問にも、その場で参照して答えることができるわけですから(むやみにでっち上げる手間が省けるということ)。



 というわけで、今回は『トラベラー・ハンドブック』のデータを活用し、


①未知の惑星での遺跡探査
②クーデターが起こった星からの脱出シナリオ 
③陰謀渦巻くヨットレース


 これら3本のシナリオを用意しました。合間合間は交易と、パトロンとのランダムエンカウントで繋げる形。
 結果、選択したシナリオは③のヨットレースになりました。
 ヨットレースの最後は、もちろんバリアントルールの『メイデイ』を導入。 『メイデイ』は、個人船レベルの艦隊戦をベースにしたシミュレーションゲームで、惑星の側を通過すると、慣性の法則によって、軌道が捻じ曲げられるというのがポイントです。もちろん、ミサイルを発射したら、ミサイルも慣性で捻じ曲げられる!
 これ、プレイヤーには新鮮だったようで、異様な盛り上がりを見せました。ただ、若干ハードに思われた面があるらしく、乗り切れなかったプレイヤーもいたようです。
 しかし、タクティカルな戦闘はある程度、RPGをやるうえで避けて通れないところであるので、タクティカルな要素をどれだけ雰囲気作りに還元できるかが大事になってくるわけで、そういうシチュエーションをたくさん用意しなければなりませんね。

 例えば、「宇宙船がレッドゾーンに指定されている星系に漂着した」というシチュエーションを作るにしても、演出で無理やり宇宙船を漂着させるのと、宇宙戦闘で負けた結果としてそうさせるのとでは、プレイヤーの受け取り方が違ってきます 問題は、その先。どうやって、RPGシミュレーションゲームの幸福な結婚をさせるか、ということです。

 おそらく、慣れない人向けには、『メイデイ』に参加する宇宙船の数を減らす、というのがベストでしょう。

 今回は、PC側2隻・敵側2隻でやってみたので多少複雑に見られたようなところがあるのですが、普通PCは1隻の宇宙船に全員が乗り込んでいる場合が多いので、1対1、ミサイルは1発ずつ、目標の惑星に早く到着したほうが勝ち(途中で打ち落とされたら負け)みたいにすれば、だれでも管理することができるのではないか、なんて考えたりしました。