『秘術の書』の予約が開始されています。

 翻訳作業に協力させていただいた『ダンジョンズ&ドラゴンズ 第4版』のサプリメント『秘術の書』の予約が、Amazon.co.jpで開始されています。

秘術の書 (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版サプリメント)

秘術の書 (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版サプリメント)

 「『ダンジョンズ&ドラゴンズ』日本語版公式サイト」にてプレビューが発表されているのでまずは、こちらをご覧下さい!


・これでもくらえ、とっておきの呪文を―8月31日発売『秘術の書』 プレビュー掲載!
http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/news/4th_ap/ap.html


 何回か触れたことがあるかと思いますが、そもそも私が『D&D』に出逢ったのは、小学校5年か6年の頃に発売された黒田幸弘氏の『D&Dがよくわかる本』の改訂版がきっかけでした。それまで幻想文学やファンタジーに興味はあったものの、なかなか自分のイメージを形にするだけの器を見つけられずにいた私は『D&D』の世界にどっぷりとはまりました(当時は『指輪物語』も併行して読んでいました)。そこから遡って新和版やメディアワークス版のルールブックやモジュール、雑誌などの収集を開始するのも長くはかかりませんでした。
 当時からのキャンペーンの舞台であった中世ヨーロッパを基体とした背景設定であるガゼッタシリーズは、今でも故郷のように感じていますし、『竜剣物語』を読んだ時の感興も忘れ難いものがあります。実は昔、大学入学と上京を期に伴いすっぱりRPGから足を洗おうかと思った時があったのですが、どうしても『D&D』のサプリメントが処分できませんでした(特に思い入れの深かったのは、『コンパニオン・ルールセット』(緑箱)です)。その後に残しておいた『D&D』がきっかけとなって優れた人たちと出会うことができ、今に至るわけです。
 そのような経緯がありましたので、こうして『D&D』の翻訳に本格的に携わることができるようになったことは、ファン冥利につきるというか、まるで夢のようです。


 なお、『D&D』が好きだと言うと意外なタイミングで同好の士に巡り会うことがままあるのですが、そうして巡り会った方は創造的な仕事についている場合が多い印象があります。つい最近では、ミステリ評論家の蔓葉信博さんが『クラシックD&D』の緑箱までやりこんでいた(「オフィシャルD&Dマガジン」も全号コンプリートしていた)ことを知って驚きました。ガゼッタの私家訳もされていたとか。熱い、熱すぎる!


 と、ついつい個人的な感興が先に立ってしまいましたが、先月末発売の『武勇の書』に引き続きまして、『秘術の書』は、プレイヤー・キャラクターへ新しく胸躍るような選択肢を加えてくれるサプリメントです。

武勇の書 (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版 サプリメント)

武勇の書 (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版 サプリメント)

  • 作者: ロブハインソー,ロバート・J.シュワルブ,クリスシムス,デヴィッドヌーナン,Rob Heinsoo,Chris Sims,Robert J. Schwalb,David Noonan,日本語版翻訳チーム
  • 出版社/メーカー: ホビージャパン
  • 発売日: 2009/07/31
  • メディア: 大型本
  • クリック: 26回
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 ウィザード・ウォーロック・ソードメイジ(『フォーゴトン・レルム・プレイヤーズ・ガイド』所収)ら、既存の秘術系のパワーを主体としたプレイヤー・キャラクターにとってはまさに垂涎の選択肢が並んでいます。トウム(魔道書)、ヴェスティジ(魂魄)、使い魔など、まさに目眩くオプションの数々! ぶっちゃけ『秘術の書』を導入すれば、あなたのウィザードは大幅に強化されること請け合いです。
 また、9月末に発売予定の『プレイヤーズ・ハンドブックⅡ』で詳しく紹介されるソーサラーやバードといったクラスのオプションが先んじて紹介されるのも見所でしょう。ソーサラーとバードについて本格的に運用しようとするのであれば翌月の『プレイヤーズ・ハンドブックⅡ』をお待ちいただきたいのですが、『秘術の書』で雰囲気だけでもひとあし先に知っておくのは悪くない話だと思います。
 さて『武勇の書』や『秘術の書』を開くと、怒濤のごときデータの洪水に圧倒されるかもしれません。ただずっと『D&D』を遊んでいる身からすれば、第4版の『D&D』はサプリメントで追加データが加わってもデータそのものの整理がよいので、必要なデータの取捨選択がとても楽になった印象があります。なので、見かけよりもずっと負担は少ないはずです。それに本全体の見通しがよいので、サプリメントを導入することによって新しい世界が広がるという、ぞくぞくするような体験ができる。こうした「サプリメントを読み進めるうちに世界が広がる感覚」というのが、コンピュータRPGではなかなか得ることのできない会話型のRPGならではの面白さなのではないかと私は勝手に思っています。なかでも『秘術の書』で導入されるパワーや特技はひとひねりされたものが多いので、ゲームシステム的な驚きを求める向きには必ずや満足いただけるものと確信しています。
 一押しは、クラス毎に用意された伝説の道の数々です。特に私の一押しは、プレビューでも紹介されている「ウィーヴァー・オヴ・チャンス」。これはエントロピー(不確定性)を操作する伝説の道。エントロピー・ポイントなる謎の力をためてステキな効果をもたらすことができます。
 説明文をプレビューから引用してみますが、なんとアナーキーな(褒めてる)!

ウィーヴァー・オヴ・チャンス
Weaver of Chance/運命の織り手

「遠大な計画や高尚な目的なんてないわ。すべては偶然に起こることなの」


 君は宇宙の実相をはっきりと理解している。宇宙とは、乱心した神々が戯れ、プライモーディアルたちがはしゃぎ回る無分別の巷、そしてウィザードたちが功成り名を遂げることのできる場所。君は、世界と世界の谺である諸次元界が、入念な設計によってではなく、永劫とも思われるほどの長きに渡るゆっくりした反芻の結果、出来上がったということも理解している。
 神々が人々の宿命を操り、運命の糸をつむぎ、包括的な原理原則を具体化するこの万有の中で、人生観が揺るがずにいられる者はまずいない。君を狂人だと考える者すらいるだろう。だが、君は世界の究極の意味や万物の目的について何の幻想も抱いていない。ともあれ、君の倫理観は純粋なものだ。君が善行を為すのは、唯一の真理や大いなる目的を探し求めるためではなく、たんに自ら選んでそうするからなのだ。

 ページを開くと、そこに無限の世界が広がる。それが『D&D』の、そして『秘術の書』の素晴らしさです。
 ぜひ、この熱気を体感してみて下さい!