「SFマガジン」2010年5月号に「「世界内戦」とわずかな希望――伊藤計劃『虐殺器官』へ向き合うために」を掲載いただきました。


 「SFマガジン」の2010年5月号に、『虐殺器官』論の全文を掲載いただいています。経緯が経緯なので、拙稿に対していろいろ語るのは気が引けるというか、つらいのですが、読解の補助にしていただければ幸いです。
 選考委員の先生方にいただいた講評をふまえたうえで、選評への応答という意味も込めて全体に大幅改稿を加えており、かつ30枚近く書き足しております。

S-Fマガジン 2010年 05月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2010年 05月号 [雑誌]

 気づいておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、受賞論文は、伊藤さんが亡くなった際にアップした『ハーモニー』小論の問題意識から出発しています。ご興味のある方は、こちらもご覧下さい。
 「SFファンがなぜ『虐殺器官』を褒めているかわからない」という方も。
http://d.hatena.ne.jp/Thorn/20090324


 なお、ブログで紹介いただきましたid:nacky7さん、id:ggincさん、朱鷺田祐介さん(http://suzakugames.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/rpgbr-663e.html)、モモチさん(http://shonisen.blog39.fc2.com/blog-entry-97.html
 そしてGhost Soundで言及して下さっている皆さん、どうもありがとうございます。


 それにしても「笙野頼子ばかりどっと読む」休止か(モモチさんのところ参照)。
 哀しすぎる。ゆっくり休んで、また戻ってきて下さい。



 せっかくなので楽しい話も。
 今号は、およそ40年ぶりの、「SFマガジン」でのク・リトル・リトル特集となります。この号の表紙に名前が出るとはなんとも光栄! そしてチャイナ・ミエヴィルに熱狂!
 クトゥルフ・ファンはいろいろいて、記号としてのクリーチャ―が好きな人、ラヴクラフトのゴシック小説直系の文体にやられた人など、さまざまな嗜好がありますが、私は筋金入りのラヴクラフト原理主義者(のつもり)で、その雰囲気とジャズ・エイジの狂騒が合わさった部分が好みなのです。中学生の時に図書館で『クトゥルフの呼び声』を遊んでいて、「岡和田君が黒魔術をやっています」と通報されたのも良い思い出。「幻想と怪奇」のラヴクラフト特集とか読んでいました。
 だから、サンディ・ピーターセン、リン・ウィリス、キース・ハーバーのこだわりに同調します。
 個人的なベストをあげるとしたら、「クトゥルフの呼び声」はもとより、「アウトサイダー」、「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」 、「宇宙からの色」、「セレファイス」、「ナイアルラトホテップ」、 「彼方からの挑戦」、「ピックマンのモデル」、 「闇にささやくもの」、「時間からの影」、「魔女屋敷で見た夢」、 「ファラオとともに幽閉されて」なんかに傾倒しているボンクラでした。
 なお、竹岡啓(id:Nephren-Ka)さんの概説に圧倒。ダニエル・ハームズやキース・ハーバー、ひいてはケイオシアム社とか、お馴染みのお歴々がSFMで読めると色々心強い。
 面識ないのですが、歳が近いのに尊敬します。
 また、同特集には『クトゥルフの呼び声』ファンにはやや残念な記述もありますが、これについては別個に応答を考えています。