そろそろ書店に並んでいる頃の「SFマガジン」2010年9月号、特集「東京SF化計画」において、「東京SF大全」の一部を担当させていただきました。
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/07/24
- メディア: 雑誌
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フランク・ミラー『RONIN』、吉見俊哉『都市のドラマトゥルギー』、荒俣宏『帝都物語』の小論を担当させていただいております。
- 作者: Frank Miller
- 出版社/メーカー: DC Comics
- 発売日: 1995/03/01
- メディア: ペーパーバック
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- 作者: 吉見俊哉
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/12/04
- メディア: 文庫
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- 作者: 荒俣宏
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1995/05/01
- メディア: 文庫
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中でも特に紹介できて嬉しかったのは、『RONIN』でしょうか。これは本当に収穫でした。未訳なのが信じられないくらい。やや、私でよければ、いつでも翻訳させていただきますよ!(握り拳)
Amazon.co.jpでのナイトオウルさんのカスタマーレビューもすばらしいので、こちらでご紹介させていただきます。
「RONIN」とは、もちろん「浪人」のこと。
これはアメコミ界の鬼才・フランク・ミラーが、日本の名作劇画『子連れ狼』にインスパイアされて描いた、SFサムライ・コミック!
中世日本で主君を悪魔に殺され、「ローニン」となった侍が、近未来のアメリカに転生し、生体コンピュータと手を握った悪魔に再び戦いを挑む・・・。とストーリーだけ聞くと支離滅裂なキワモノのようですが、実は物語・作画共に緻密に計算された、アメコミ史上に残る大傑作です。
劇画の構図やコマ割りを大胆すぎる程に導入し、まさにミラーはやりたい放題、才気走っています。今の日本マンガからは廃れてしまった表現形式が、アメコミの中で新鮮な輝きを放っているのは、かなり衝撃的です。
例によって、ヘンな日本の描写が出て来ますが、読み進む内に、「これも実は意図的な仕掛けなんじゃないか?」と思えてくる辺りは、やはりミラーの天才の為せる業。
80年代以降の日本マンガ・ジャパニメーション等に影響を受けた現在のアメコミ以前に、70年代劇画の影響の下に生まれたアメコミが在った。アメコミファンだけでなく、むしろ日本のマンガ読者にこそ読んでもらいたい。
ナイトオウルさんのレビューに圧倒されそうですが(汗)、SFマガジンの方もよろしくお願いします。
『都市のドラマトゥルギー』小論も、吉見俊哉さんの執筆された放送大学のメディア論についてのテキストを読んでいた身には、嬉しいお仕事でした。
『帝都物語』小論は、世界幻想文学大系や『クトゥルフの呼び声』が好きな人にもぜひご覧いただきたいですね。
なお、「東京SF化計画」でレビューされている30作品は、SF評論賞受賞者たちでの時間をかけた議論の末に選定されたもの。
叩き台としてはそう悪くない仕上がりになったのではないでしょうか。ぜひ、皆さまも、ご自分なりの「東京SF」を考えてみて下さい。
このほかにも、TOKONブログでの「東京SF大全」(そろそろカーテンコールが近づいてきました)、それにTOKON10スーヴェニアブック(入場者用パンフレット)での、「東京SF大全」(まとまった評論)に、「東京SFビブリオ100」という仕事もさせていただいております。
私は再度『帝都物語』についてじっくり語っております。というか、SFマガジンで投げかけられた問いへのアンサーとなります。
ぜひ、併せてご笑覧いただけましたら幸いです。
なお、岡和田が「東京SF」として推しきることのできなかった作品としては、チャペックの『山椒魚戦争』がございます。
この機会に早川文庫から出ていた栗栖継氏の完訳を読む機会を得られて、 面白く堪能しましたし、栗栖氏のお仕事にも興味が湧いてきました。
折りを見て、彼の小説を探したいと思っております。
- 作者: カレルチャペック,Karel Capek,栗栖継
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1998/12
- メディア: 文庫
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また、今回の樺山三英さんの小説『太陽の帝国』は、SFセミナー2010の合宿企画として開催された「樺山三英と一緒に、樺山三英の小説を語ろう」企画の反映となっております。
例えば、この小説で行われた『太陽の帝国』への「読み直し」(り・リーディング)は、周辺の批評的文脈、例えば作中にも登場する「バラード翻訳者」の見解(
http://speculativejapan.net/?p=102)とも呼応を見せる気がしています。
いずれにせよ、樺山さんの連作が、いよいよ完結を目前として大きな変容の時期に入ったのは間違いないでしょう(なにせ、その前が『世界最終戦争』、『収容所群島』という流れだったのですから)。
これはすごいことですよ。いったいどこへ行くのだろうか。
今までがダンテの言う「地獄」、「煉獄」だったとして、「天国」へ行き着くことは、はたしてできるのでしょうか。俺も早く、SFセミナーの記録をまとめないと。
- 作者: J.G.バラード,高橋和久
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 1987/09
- メディア: 単行本
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