「ブレインダンス・クラウドコア」のプレビューが公開されました。

 「終わりの会」の永田希さんが編集をされている同人誌「モダン・ラヴ」が、来たる第11回文学フリマ(12月5日)において頒布されます。
http://owari.tc/M/

 その「モダン・ラヴ」に収録予定の「ブレインダンス・クラウドコア(インデックスによる戯れ——適応サイクルから適応スパイラルへ)」は、永田希さんと高橋志行さんの対談記事なのですけれども、そのプレビューが公開されました。
 こちらで拙著『アゲインスト・ジェノサイド』を題材の一つとして取り上げて下さっています。ありがとうございます。
 パース記号論と「共同ゲームデザイン」という考え方を軸に、RPG論と音楽表現の媒介項が模索されています*1
 このブログをご覧の方にも刺激になる部分が多々あるかと思いますので、僭越ながらご紹介させていただきます。
 ぜひ、ご覧になって下さい。
https://docs.google.com/View?id=dgsv4xnb_120fq69kcf3

 なお「終わりの会」の同人誌(「モダン・ラヴ」の前に発表された)「クロニック・ラヴ」は、永田さんによるスティグレール研究者・谷島貫太さんへのインタビューが圧巻で、お読みになる価値は充分にあります。レイアウトも一切の妥協がなく、実に美しい。
 その流れからしても、「モダン・ラヴ」は期待できます。

2010.11.24追記

 参考までに、以前「クロニック・ラヴ」を通販させていただいた際に、編集の永田さんにお送りした感想を、ご本人の許可を得て再掲させていただきます(若干文脈に合わせて変えた部分があります)。


 「クロニック・ラヴ」のサイトはこちらになります。
http://owari.tc/C/

●全体


 レイアウトやアートワークが美しいですね!
 目が悪いので、慣れるまではフォントを見るのが大変でしたが(笑)「エクス・ポ」の例を思い出しました。送付していだく際にも、この造本を傷つけないためがみられました。


●谷島貫太「技術と時間(スティグレール)をめぐって」(インタビュー)
●谷島貫太「故障したコンピュータは電気狂人の夢を見るか―物質的脆さについての試論―」(論考)


 スティグレールについての谷島貫太氏のインタビューは非常に面白かったです。スティグレールは、時間に代表される現象学的なものと、脳構造やシステムワークに代表される科学的・計量的なものをうまく接合させているとざっくり見ていますが、それがプラトンを出発点にしているとは面白いですね。再帰的回路の不在、という問題は、私が「ジャーロ」という雑誌に書いたときに考えていたことにリンクするので、不思議なシンクロニシティを感じました。
 それに合わせて、スティグレールの論考は、いつもながら谷島氏らしい精緻な手つきで素晴らしい。大いに啓発されました。何かしら援用させていただくかもしれません。ただあえて言えば、この明晰さと――おそらくはその出発点にあり――時折噴出する素朴さとのギャップに疑問を感じる部分もありました。
 それはおそらく意図されてのことでしょう。私はスティグレールをまともに読んでないので、なんとも言えませんし、単なるいちゃもんレベルですが、何かしらの文学的な屈折みたいなものがないと、デリダ的な文字にせよ、そのネット的な位相の定義にせよ、もっとジョン・スラデックのように破壊的にできるのではと、注文にもならない注文をつけてしまいたくなります。
 ただそこから演繹される「サーバーパンク」というコンセプトは面白いですね。
 かねてからサーバーが落ちたらネットは外在的にシャットアウトされていまうと思っていたし、事実、大江健三郎を論じたことがあるのですが、その時にも書いたことがあるので、非常に重要な概念と思います。


●川村元紀「最終世界系少女★すーぱーふるいど」(漫画)
 この人の芸術作品を見てみたいですね。
 単体ではなんとも言えません。セカイ系的なものを内側から壊す感じでしょうか。そういえば、私は「幻視社」という同人誌に参加していたのですが、
「幻視社」に昔掲載されていたコミック(こちらも個展を開いている芸術家)にテイストが似ていた気がします(年も近い)。


●朝霞軒行「ホリゾンタル・ラヴ」(小説)
 レイアウトが非常に美しく、嘆息させられました。文字の配置も考えられたものではないかと推察いたしますが、鏡像段階、とひとこと説明されるとすっきりしますね。興味深く拝読しましたが、あえて難癖をつければ、ギュヨタの『エデン・エデン・エデン』、「以降」のものを求めたい気もします。


●tomad「ネットと現実の間の彼の死について」」(コラム)
 いろいろ考えさせられました。Twitterも時間差でTweetできるようになるみたいですし、こうした問題はもっと複雑になるでしょう。ただ、当分は、居場所の偽装工作に使われるだけでしょうね。


神聖かまってちゃん
 実際にMyspaceで視聴してみました。なるほど! ゲロゲリゲゲゲというノイズバンドが昔ありましたが、それを連想しました。
ゲロゲリゲゲゲのライブを動画で見たことが本当にあるのですが、かまってちゃんの狂気はわりと偽悪的で、彼らは実は発狂しないのでは、と勝手に思っています。ただ、著述家の森下くるみさんがかまってちゃんについて言及していて、妙にしっくりくるものがあったことを書き添えておきます。

 つれづれなる放言をお許しください。次は永田さんの、論考なり作品なりも拝読させていただきたいと思いました。

ガンドッグゼロ リプレイ アゲインスト・ジェノサイド (Role&Roll Books) (Role & RollBooks)

ガンドッグゼロ リプレイ アゲインスト・ジェノサイド (Role&Roll Books) (Role & RollBooks)

*1:こちらの記事で紹介した考え方とも密接な関わりがあるようです。http://d.hatena.ne.jp/Thorn/20100911/p2