SF乱学講座「『世界にあけられた弾痕と、黄昏の原郷』を講読する」レポート

 6月4日のSF乱学講座では、『世界にあけられた弾痕と、黄昏の原郷』の整理の背景と文芸ジャーナリズムの状況を概説した後、「もぐら通信」掲載の『世界にあけられた弾痕と、黄昏の原郷』論を紹介。
 そこから『不機嫌な姫とブルックナー団』論、円城塔論三作、「イロニーとしてのシェアードワールド」、『頭蓋骨の中の楽園』論、それに「現代「伝奇ミステリ」論」より麻耶雄嵩殊能将之を扱ったパート、「ウィリアム・ホープ・ホジスンと思弁的実在論(スペキュレイティヴ・リアリズム)」、「トランプ大統領以後の世界」と講読していきました。前振りとして山野浩一NW-SF宣言」も読みました。
 できれば、「ケルトの幻像と、破滅的リアリズム」にまで進みたかったが、ニック・ランドにちなんで、特別に収録外の「高橋和巳、自己破壊的インターフェイス」を紹介してタイムアップ。来場者からの質問は出たが、主に思弁的実在論についてでした。

 結論としては、ちっぽけな「セカイ」ではない世界の破滅が着々に進む中で、他者としての怪物性について、ポストモダン批判、言語の中から人は出られないというニヒリズムにどう向き合っていくか、そのスタンスが問われる、ということになりましょうか。
 もう一つ講読プランを立てるなら、「文学の特異点」から、「「世界内戦」を描いたゲームリスト10」、「「世界内戦」下、「伊藤計劃以後」のSFに何ができるか」、『深紅の碑文』論、『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』論、「トランプ大統領以後の世界」かな。
 こちらは歴史とシミュレーションについてという切り口。歴史と哲学は「混ぜてはいけない」部分が多々あるが、それでも歴史を思考しなければならない場合、どうしたらよいか、ということ。