『アポカリプト』を観る


 感想、書いていませんでした。
 僕は『ブレイブハート』を3桁は観ている男なので期待していたが、裏切られなかった。
 ひどくシンプルなストーリー。極めて再現性の高いセット。野蛮さ極まりない衣装。痛そうな殴り合い。瞬間的に散りゆく命。素晴らしい。戦術面でも勉強になる。
 しかし何より魅せられたのは、こうしたシンプルな運動性、原初的な物語の持つ力強さというべきものだ。スペイン船に「背を向ける」ラストも秀逸であるが、それはおまけに過ぎない。
 あえて言えば、こうした原初的な運動性こそが〈文学〉だろう。
 少なくとも批評のある種の出発点である、18世紀ドイツ、ホメロス叙事詩を語るレッシングの文には、そのような問題意識が観られたものだった。〈作品〉そのものからあえて目をそむけがちな(現代日本における)批評的な言説の軟弱さがまかり通る現状において、ひどく痛快な映画ではあった。自戒を込め、噛み締めて観る。

アポカリプト [DVD]

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