『サブカルチャー戦争』に、長篇評論「「世界内戦」下の英雄(カラクテル)――仁木稔『ミカイールの階梯』の戦略」が掲載されます!

 12月2日ごろ、共著『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』と題された評論集が、南雲堂から発売されます。

サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ

サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ

序論 「セカイ系」から「世界内戦」へ


第一部 二一世紀の「戦争」像――9・11以降の戦争表象

藤田直哉 9・11系ハリウッド映画群の謀略――テロリズム以降の映画表現

小森健太朗 Wから00へ 9・11を挟んで変貌した〈ガンダム〉シリーズの戦争描写

飯田一史 村上龍はなぜ「カンブリア宮殿」に至ったのか?

小森健太朗 モナドロギーからみた『図書館戦争

岡和田晃 「世界内戦」下の英雄(カラクテル)――仁木稔『ミカイールの階梯』の戦略」

白井聡 アジア主義の廃墟に何が見えるか――安彦良和虹色のトロツキー』を読む


第二部 ロストジェネレーションと世界内戦

笠井潔 群衆の救世主(セレソン)――『東のエデン』とロストジェネレーション

蔓葉信博 至道流星と情報戦


第三部 コミュニケーション/コンテクスト/コンフリクト

渡邉大輔 コミュニケーション社会における戦争=文学――阿部和重試論

海老原豊 空気の戦場 あるいはハイ・コンテクストな表象=現実空間としての教室

ポスト9・11の表現を捉えるための作品リスト


 ここには、

「世界内戦」下の英雄(カラクテル)――仁木稔『ミカイールの階梯』の戦略


 という24000字程度の長篇評論を掲載いただいています。
 なお付録の「9/11以降の表現を捉えるためのガイド」にて、「ゲーム10選」と、「小説20選(の一部)」も担当いたしております。


 「世界内戦」と名指された、表象を切断する9/11同時多発テロ以降の戦争状況。
 その本質を的確に捉え、かつオルタナティヴを志向する表現のあり方のひとつの達成として、『ミカイールの階梯』という優れたSF小説について論じています。


 拙稿に関しては、歴史的な背景をふまえ、ひとつ筋の通った世界観がリアリティをもったものとして成立可能なのかという問題意識のもと、モダニズムの延長線上の表現形式として、もはや忘れられたとみなされがちな――


・(戦略論における)シミュレーション
・ヒロイック(サイエンス)・ファンタジー


 ――という二つの枠組みを蘇生させています。その意味で、私の原稿は純然たるSF評論になっていると、胸を張って言うことができます。
 ひとえにシミュレーションと言っても、ボードリヤールが『シミュラークルとシミュレーション』で言うような、いわば哲学的シミュレーションとピーター・P・パーラが『無血戦争』で示した戦略学としてのシミュレーションとは別物でありながら重複する点もあり、そうした差異は重要なのではないかと考えます*1
 またヒロイック・ファンタジーにしても、幻想文学サブジャンルの中では理論的に軽視されがちな分野であります。しかしながら、そこにもまた、鉱脈があることは間違いありません。

 そして評論の対象である『ミカイールの階梯』は巨大な作品であり、英語に訳されていれば世界幻想文学大賞も狙えるレベルだと断言いたします。
 そのような作品に比して、拙稿はあくまで基礎資料レベルに留まる分析だと思いますが、さりとて『ミカイールの階梯』についてまともな研究の一つもない状況、ひいては、(表象のみならず)歴史性を軸にしたフィクションが現状の文学的な(さらにはサブカルチャー的な)コードにおいては評価されづらくなっている状況に、一石を投じられるだけのクオリティは担保できていると、自分なりに任じております。
 タイトルからもおわかりの通り、前著『社会は存在しない』に寄稿させていただいた「青木淳悟――ネオリベ時代の新しい小説(ヌーヴォー・ロマン)」、そして「「世界内戦とわずかな希望」――伊藤計劃虐殺器官』へ向き合うために」の問題意識も引き継いだものとなっています。私が協力させていただいたSFセミナーSF大会SF乱学講座などのイベントでの経験もフィードバックされています。
 畏れ入りますが、どうぞ、お読みいただけましたら幸いです。そして願わくば、『ミカイールの階梯』の読み直し(リ・リーディング)に挑戦してみて下さい。

*1:このあたり、SFの文脈で最も早い時期に言及した著作に、荒巻義雄『シミュレーション小説の発見』があります